遺伝子組換え・ゲノム編集実験

マイクロ流路チップやマイクロドロップレット技術を活用した遺伝子組換え・ゲノム編集実験は、ゲノム編集分野の研究可能性を拡大し、その進展をさらに加速させています。
遺伝子編集と細胞単離の統合は研究効率を向上させ、コスト効果も高い方法として有望です。将来的には、個別化医療や標的薬物送達、細胞治療法において重要な役割を果たす可能性があります。
 

ゲノム編集技術とは

ゲノム編集技術は、生物のゲノム上にある特定の遺伝子配列を狙って変化させる技術です。
CRISPR-Cas9 ゲノム編集
CRISPR-Cas9
最も広く使用されているゲノム編集技術で、特定のDNA配列を認識して切断することができます。ガイドRNAが標的DNA配列に結合し、Cas9タンパク質がその場所を切断します。この技術は高効率であり、様々な生物に適用可能です。

TALEN
Transcription Activator-Like Effector Nucleasesの略で、特定のDNA配列を認識して切断する人工ヌクレアーゼです。TALENは、特定の塩基配列を認識するタンパク質とDNA切断酵素を組み合わせたもので、CRISPR-Cas9と同様に高い精度でゲノム編集が可能です。

ZFN
Zinc Finger Nucleasesの略で、DNA結合ドメインとDNA切断ドメインから構成される人工ヌクレアーゼです。ZFNは、特定のDNA配列を認識して切断することができ、ゲノム編集に利用されます。
 
遺伝子組換え・ゲノム編集技術の応用

  • 医療
    遺伝子編集技術は、遺伝性疾患の治療や新しい治療法の開発に役立ちます。例えば、CRISPR-Cas9技術を利用して特定の遺伝子を編集することにより、遺伝性疾患の原因となる遺伝子変異を除去することが可能になります。
  • 農業
    ゲノム編集技術は、作物の耐病性や耐候性などを向上させるために使用されます。これにより、食糧問題の解決や持続可能な農業の実現が期待されています。
  • バイオプロセス
    バイオテクノロジー産業において、遺伝子組換え技術は新しい製品やプロセスの開発に利用されています。例えば、バイオ燃料の生産や医薬品の開発において重要な役割を果たしています。

 

マイクロドロップレット技術を用いたゲノム編集実験の利点

  • カプセル化と送達効率
    細胞とCRISPR試薬をドロップレット内でカプセル化し、CRISPR成分の細胞内への正確な導入を確実にします。この方法は、CRISPRシステムの核内への取り込みを改善し、効果的な遺伝子編集を可能にします。メカノポレーション技術では、マイクロ流路チップ上に形成された微細狭窄部をドロップレット内にカプセル化されたサンプルが通過することで、細胞膜および核膜に一時的な孔が発生し、CRISPR成分の迅速かつ効率的な取り込みを実現します。
  • ハイスループットスクリーニング
    ドロップレットジェネレーターは毎秒数千の均一なドロップレットを生成し、それぞれが個別の反応場となります。これにより、同時かつ効率的な遺伝子編集実験が可能になります。
  • 試薬の使用量削減
    マイクロ流体ドロップレットの小さな体積により、必要な試薬の量が減少し、コスト効率が高まり、無駄な消費も最小限に抑えられます。
  • 細胞生存率(Cell Viability)の向上
    マイクロ流体ドロップレットを用いることで細胞への負荷が低減され、高い細胞生存率が維持されます。マイクロドロップレット技術は、遺伝子編集実験の成功に寄与します。

シングルセル ドロップレットジェネレーター DMSCS
シングルセル ドロップレットジェネレーター DMSCSは、最先端のドロップレット技術を活用し、迅速かつ効率的なドロップレット生成を実現し、ゲノム研究をサポートします。
シングルセル 単離 ドロップレットジェネレーター Single Cell Droplet Generator DMSCS NTサイエンス
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